深刻さが微塵も感じられないトーン&マナー、弁護士が国際的な諜報活動の渦中に放り込まれるという設定、生身の身体で何人分もの奮闘を強いられる弁護士オーウェン・ヘンドリックスの姿に「原作はマンガなのかな」と思いました。しかし現時点ではそのような情報を得ていません。
舞台はアメリカ、イエメン、ベラルーシ、オーストリア、レバノン、スイス、ドイツ、チェコなどへと移り変わります。現地できちんと撮影したかどうかは定かでないものの、諜報もののなかでも股にかける国の数だけは多いです。今のところ、ロケ地リストにはアメリカ、オーストリア、カナダが挙がっています。雪のシーンはカナダを使ったのかもしれません。
さてこのドラマ、CIAの法務部に入ったばかりの弁護士オーウェン・ヘンドリックスが主人公。オーウェンを演じるノア・センティネオの作品を観るのはこれが初めて。マーク・ラファロ(「はじまりのうた」「ゾディアック」「シャッターアイランド」)の若い版とみなされることが多いそうで、どちらもイタリア系の血筋で顔立ちが似ているのみならず、イイ男なのか、そうでもないのか、よく分からないフニャーっとした顔つきのところも共通点と思います。
新米弁護士オーウェンは何度も窮地に立たされます。各国諜報機関やFBI、殺し屋やマフィアにも狙われます。しかし彼はラフでカジュアルで大らかなので観ていてドキドキハラハラしません。発想が独特で枠から外れており、邪心なく策士として機能でき、不思議な話術で他者をその気にさせることができます。コミカルなテンポで話が進みます。本作がシーズン1で、この先シーズン2へと続いていきます。予感としてはお気に入りのシリーズになりそうです。
オーウェンがマックスと手を組むことにした動機らしきものはいくつかあるのですが、決定打は何だったのでしょう。その点がよく分かりませんでした。
CIAに就職していきなりディープなところに片足を突っ込んでしまい引っ込みがつかなくなった、マックスに「10年分の秘密作戦が公になる」(それを止められるのはオーウェンだけ)と脅しをかけられた、彼女との関わりに謎解き的興味を掻き立てられた、「あなたを守れるのは私だけ」と言われた、その辺りが理由でしょうか。
CIAに届いたマックスからの脅迫状に対し「調べろ」と指示こそされたものの、職務を遂行するうえで法務部内の上司や同僚があてにならなかったことも、彼と元工作員マックスとの距離を縮めた要因と考えられます。
「へえー」っと思ったところのあった出演者のみ取り上げます。
[出演俳優たち]
ノア・センティネオ(オーウェン・ヘンドリックス役)
イタリアとドイツの血を引く。ロマンティックコメディが主戦場らしい。6歳のとき、マスティフ犬に襲われて口元を損傷。現在も傷跡が残っているとのことだが目立っていないように思う。
ローラ・ハドック(マックス・メラッゼ役)
作中ではベラルーシ出身という設定だが、イングランド出身の女優。サム・クラフリンとの間に子どもがふたりいる。彼とは既に離婚。サム・クラフリンは「ピーキー・ブラインダーズ」でオズワルド・モーズリー役、「エノーラ・ホームズの事件簿」でマイクロフト・ホームズ役。まあ、なんと言うかイイ男よね。
アーティ・マン(ヴァイオレット・エブナー役)
インド系アメリカ人。亡くなった父親は医者、母親は産婦人科医。ニューヨーク大学で映画を学んだ。夫は金融業界で働いている。
ファィベル・スチュワート(ハンナ・コープランド役)
父親はスコットランド、ロシア、ネイティブアメリカンの血筋。母親は中国、日本、韓国の血を引く。5歳で空手を始め、6歳で競技に出るようになり、2002年と2003年の世界チャンピオン。2003年には黒帯でジュニア殿堂入り。
バイロン・マン(ザンダー・ゴイ役)
香港出身。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業し、南カリフォルニア大学ロースクールで法務博士号を取得。多分、頭脳明晰な人。流暢な北京語、広東語、英語、タイ語を話すとのこと。タイの血も流れているのかな。
シーズン1は、自由の身となってベラルーシへ帰りたいCIA元工作員のマックス、ロシアと通じている彼女を再び工作員として活用したいCIA、マックスとCIAの間で翻弄されつつも自身の諜報センスを開発・発揮していく弁護士オーウェン。この三者の動きをベースに、他国のマフィアや利害関係者が絡んでいく展開となっています。
このシリーズは面白いし、今後さらに面白くなると予想します。
[ロケ地]カナダ(ケベック州)、アメリカ(カリフォルニア州)、オーストリア(ウィーン)