映画「ゲット・アウト」が示す“種の優性”という発想の不気味さ

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ブラック・ミラー」シーズン1の “1500万メリット” で主要な役を演じたダニエル・カルーヤが出演しているということで4~5年前に視聴。

アメリカ社会の人種差別を取り上げています。差別を直接的に表現してもいますが、その根底にある “種の優性” へのこだわりがいかに不気味であるかをホラー仕立てで表現した作品のように感じられます。

白人の恋人ローズの実家を訪れることになった黒人青年のクリス。事前に「自分が黒人であること」をローズが家族に伝えていないことを知って不安になります。両親との初対面で気持ちの良い反応が返ってくると思えなかったのでしょう。しかしローズは「オバマに3期目があったらパパは投票する」と親が差別主義者ではないことを強調します。

恋人の運転で彼女の実家へ向かうクリス。彼女は途中で鹿をはねますが、やってきた警官がクリスに対して失礼な態度をとります。そして実家に到着。両親や弟、親睦会へ招かれた人たちに対して奇妙なものを感じるクリス。彼らは稀少で興味深い生き物を見るようにクリスを眺め、礼節を保っているとは思えぬ発言をします。発言内容は黒人の能力に対する褒めです。しかし根底に偏見と自慢できるものを欲しがる気持ちが垣間見られます。親睦会にやってきた大多数は白人ですが、年配の婦人の夫として同伴していた若い黒人も「らしくなく」不自然さが漂います。

ローズの両親と弟は裕福であるかもしれませんが、振る舞いや言動に気品を欠いています(個人の感想です)。黒人で体格のよいクリスのもつ “遺伝子構造” とその活用法に関心があるようです。

ローズの実家であるアーミテージ家の使用人(ウォルターとジョージナ)にもクリスは不審なものを感じます。彼らは黒人で、昼間は客人のクリスをじっと見つめるだけのウォルターは夜に全力で邸宅の敷地を疾走、ジョージナはガラスに映る自分の姿を対象物として愛でるように見つめています。また心理療法家であるローズの母はクリスに催眠療法を施し、彼の内部に暗示の鍵となる音を刻印します。

“薄気味悪い家族と使用人”。不快でいたたまれない気分になってきたクリスは、恋人ローズを説得して実家を去ることを決めるのですが…。アーミテージ家には以前から極秘に行ってきたことがありました。彼らは “自分という存在” を維持しつつ “乗り物” としてクリスたちを利用しようと考えていました。

このアーミテージ家の行っていることもホラーですが、出発点にある “種に特有と考えられている” “求める機能” “憧れる能力” を自分たちに取り込もうという発想自体が実はとてつもないホラーであることに気付かされます。

しかし日常を振り返るに、そんな目で他者を見ることがありませんか。エリートの父と美人の母の元には美しくて優秀な子どもが生まれるだろうとか、トップアスリートからDNAを継承した子どもはやはり身体的に優れているとか、白人は立体的な顔立ちで高貴に見えるなあとか、黒人は身体能力が高くていいなとか。起伏に乏しい顔立ちの白人、リズム感のない/運動のできない/歌の下手な黒人も多数いるのでしょうが “種の優性” という視点から、その人自身を見積もる、評価する、期待するということは珍しいことではありません。

“種の優性” という視点は適切に機能すれば互いへのリスペクトに通じる面があるものの、そうでなければ差別偏見の “種子” となります。また、この映画のように敬意を伴うことなく人間の遺伝的特性を “乗り物(モノ)” とみなして品定めする風潮を生むことにもなります。

普段気に留めていなかったことが、計り知れなく気持ち悪いということを立体的にビジュアル化した作品と私は解釈しました。各方面から高い評価を得た映画のようです。

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