謎の多い難事件に迫るドキュメンタリー「マードック家殺害事件 法曹一族の裏の顔」

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アメリカのサウスカロライナ州ハンプトン郡の名士マードック家。長年にわたり、エリア最大の法律事務所を経営してきた一族です。初代ランドルフ・マードックから孫のランドルフ・マードック3世、その息子アレックに至るまで、全員が法務官(検察官または地方検事)を務めており、地裁で民事から刑事までの裁判を扱っていました。

同家は実質的な特権階級であり、彼らが起こした問題、関与した事件には警察も介入しないため、早々に捜査は終了、彼らが罰せられることはありませんでした。

「泣く子も黙る」マードック家は6年で5人の死に関わったと考えられています。一連の事件とそれに対するマードック家の不可解な対応、やがて威力(影響力・政治力)の衰えとともに追い詰められていく同家とその周辺を本作は追います。原題は “MURDAUGH MURDERS A SOUTHERN SCANDAL”、シーズン1・2はそれぞれ3エピソードからなります。

関与が疑われていても未解決の事件が目立ち、判決が下された事件についても受刑者が控訴していて今なお現在進行形。実際に起きた事件であり、明らかになっていない謎に思いを巡らす余地があるため興味深いです。ドキュメンタリーにもなった「ザ・ステアケース」、日本でいうと「ロス疑惑」に似た感じです。ステアケースもロス疑惑も既に終わった事件ですが、「マードック家殺害事件 法曹一族の裏の顔」については新たな展開があれば続編製作もあるのでは、と期待を寄せています。

一家が関わっていると言われる4つの事件

ざっくり整理するとマードック一家は、以下の事件1~4に関わっていると考えられています。

  • 事件1(2015年7月): 幹線道路上でスティーブン・スミスの遺体が発見される。バスター(アレック・マードックの長男)が関与したとの情報が上がっていたが捜査が進められることはなかった
  • 事件2(2018年2月): マードック家の家政婦グロリア・サタ―フィールドがマードック家の敷地内で事故に遭い、その後死亡。検死はなされなかった。事故に関する和解金は遺族に支払われずアレック・マードックが横領。この当時、彼は重度のオピオイド中毒だったと言われている
  • 事件3(2019年2月): 泥酔していた未成年のポール(アレック・マードックの次男)の操縦するボートが川の橋げたに衝突。同乗していたマロリー・ビーチ(19歳)が行方不明となり、1週間後に遺体で発見される。操縦していたのは友人のコナ―・クックだとポールは言い、祖父ランドルフと父アレックは警察に圧力をかける。ポールは無罪を主張し保釈される
  • 事件4(2021年6月7日): マギー(アレックの妻)とポール(アレックとマギーの次男)が同家敷地の犬舎付近で射殺される。通報者はアレックだった
  • 2021年6月22日: サウスカロライナ州警察は2015年のスティーブン・スミス殺害事件の調査を再開すると発表 
  • 2021年9月: アレック・マードックが銃で撃たれる。自殺ほう助、保険金詐欺などの罪で協力者エディ・スミスが逮捕される。この事件も謎が多いとされている

マードック家の印象

揃いも揃って顔つきがよくない一家です。特にアレックは顕著(目があまりにもいっちゃってるし、顎の辺りが彼の傲慢さを示している)。息子ふたり、バスターとポールもいい顔つきではありませんが、まだ若いので固定化した感じはありません。父アレックは長年の生きざまが顔つきに見事に結実しています。美醜の問題はさておき、非常によくない顔つきです。

お金と権力のあるところに美女は集まります。ポールの元恋人モーガン・ダウティも美人です。したがってお金と権力のある家系には、美女のDNAが代々注入されることで美しい子孫が増えていっておかしくないのですが、彼らの場合、まったくそうではありません。

地方の名士で強大な権力と莫大な資産をもち、悪いことをしても捕まることがなく、やりたい放題だったマードック家。しかし潮目、風向きが変わったことで、以前と同じではいられなくなっていきます(日本の某芸能事務所のようです)。代々法曹界の重鎮だかなんだか知りませんが、その子孫たちに人としての品格が欠如していることは彼らの顔つきにはっきり出ています。

息子ふたり(バスターとポール)も半分は甘やかし、半分はネグレクトや虐待で育ったのでしょう。気の毒な人たちなのかもしれません。

そして事件の真相は?

2003年に行われたマギー&ポール殺害事件の裁判では、ポールの友人ローガン・ギブソンも証言しました。それにより非常に重要なことが明らかになります。そしてアレックは陪審により有罪の評決を受けます。量刑は終身刑。

アレックがこの事件に関与していたことは間違いないとしても、彼には協力者(共犯者)がいたはずという見方をする人も少なくありません。それはエディ・スミスでしょうか?それとも長男のバスター?後者はロースクールへ進んで法曹界を目指していたものの、剽窃で退学処分となっています。彼らふたりは無関係で第3の人物がいることも考えられます。

長男バスターはマギー&ポール殺害事件の発生当時、どこにいたか等のアリバイを求められているでしょうから、協力者(共犯者)ではない可能性が大。しかしアレックは長男バスターだけは殺しませんでした。バスターをこの世に残したことには相応の意味があると私は思っています。言い換えれば次男ポールと妻マギーについては殺す理由があったということです。

アレック・マードックは現在、判決を不服として控訴しているそうです。無罪を主張して控訴している間は協力者(共犯者)がいたとしても明言することはないでしょう。協力者(共犯者)をさして自分だけ無傷でいることは困難だからです。しかし司法取引が成立すれば、また違う展開になるのかもしれません。

2015年のスティーブン・スミス殺害事件、2018年の家政婦不審死事件についても真相究明が待たれます。捜査に進展がみられたら、ぜひとも続編を製作していただきたいです。

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