痛みを超えて再始動する特捜班「沈黙の墓地」(シーズン3)

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久しぶりの投稿です。8月は公私ともに慌ただしくてドラマどころではなく…。一般的には休暇等でのんびり過ごすのが8月のあり方と思いますが…。

「沈黙の墓地」のシーズン3。美しい警部オネムの髪型が大きく変化しています。

女性被害者特捜班を描くトルコのサスペンスドラマ「沈黙の墓地」(シーズン1)
イスタンブール警察はオネム警部をリーダーに、女性憎悪犯罪に関する特別捜査班を立ち上げます。
特捜班メンバーの心情を丁寧に描いた「沈黙の墓地」(シーズン2)
シーズン1に比較して、特捜チームの人間としての苦しみや悲しみに焦点を当てているように感じました。

エピソードの概要

シーズン2の終盤で、ベテラン警部ハサン・デュリュの息子メルトが殺人を犯します。女性被害者特捜班としての成果を称えられつつも、ハサン一家の悲劇を止められなかったメンバーたちは痛みを背負います。

特捜班は解散へ。オネム警部は休職へ。メンバーはそれぞれの持ち場へと戻って働いていました。…というところから、シーズン3が始まります。

先のシーズンから引き続き登場している人物に関しては、出番の多い/少ないはあっても顔ぶれに変化はないようです。

またイスタンブールを拠点としている特捜班ですが、キプロスやトルコ各地の警察と連携して活動を繰り広げるのがシーズン3の特徴かもしれません。

【先のシーズンから引き続き登場している人物】

オネム・オズルク:イスタンブール警察の警部。女性犯罪被害者特別捜査班のリーダーに復帰。スーデという娘(シーズン2の頃より、ずっと大人びたように見えるが現在も高校生)がいる。

ハルク・アタ:イスタンブール警察本部長(副本部長から昇進)。息子のセルダルの出世を願っており、特捜班に戻ることには反対

セルダル・アタ:警部補。本部長ハルクの息子。熱血漢だが、犯罪者に対しては暴力的

ベルク・ギュレリュズ:犯罪現場捜査官。科学捜査のプロ

セリン・コルクマズ:IT解析を得意とする警部補

フェリハ・マフムツァーデ:法医学の専門家で検視官

ゴカン・デミルデレン:検事

ハサン・デュリュ:シーズン1・2では定年退職間近のベテラン警部だったが、捜査に参加。まだ定年ではないのかも。息子メルトは服役中

エピソード1・2:「パンドラの箱」「メリスからよろしく」

導入部あらすじ

3人の女性のもとに謎めいた小包(ドラマでは “箱” と言っている)が届きます。うち、ひとりのものには “トゥーバ(宛先の名前)” と書かれた荷札が付けられていました。

治安局のギョクチェ・イルガズは、セルダル・アタ警部補に対し、謎の小包事件に関して直訴します。彼は「殺人に関係していないのなら、自分の出る幕はない」と一蹴。しかしオネム・オズルク警部に話をするよう促し、かつての特捜班のメンバーには「近く出番がやってくる」ことを匂わせます。

オネム・オズルク警部は娘のスーデとお菓子作りを楽しんでいました。オネムは長期間任務を離れ、家で過ごしている様子です。そこへ治安局のギョクチェ・イルガズが訪問。謎の小包事件について説明します。

  • 帰宅するとドアの前に置かれていた
  • 麻の紐に名前の書かれた荷札
  • どの女性に宛てたものも箱と中身は同じ
    • “報告書の修正、牛乳、卵、ゴミ袋” などと書かれたもの(直近のメモや電話のメッセージ)
    • 各女性の下着の同梱
    • アルバムから抜かれた子どもの頃の写真
  • 女性たちは「狙われているのではないか」と怯えている

オネムが特捜班のリーダーに復帰。彼女はギョクチェを事件担当者に任命します。捜査が開始されます。

そんなとき、料理の配信を行っていたインフルエンサー、メリケ・エレンソイの遺体が発見されます。賞味期限切れのダイエット食品、クローゼットに収められた値札が付いたままの服。部屋に遺されていたのは、奇妙でアンバランスな(ある意味でバランスの取れている)所有物のいろいろでした。

太った姿かたちを細身に画像修正して配信していたメリケは、何者かによって脅迫されていました。

やがて、オネム警部のもとにも謎の小包とメッセージが届きます。

登場人物

[登場人物]

トゥーバハンデメルヴェ:謎の小包が届いた女性たち

ギョクチェ・イルガズ:治安局の警官

メリケ・エレンソイ:殺害された、お料理インフルエンサー。故郷に母と病気で寝たきりの父ジャヴィトがいる

セミフ・カラバフ:メリケの叔父で、遺体の第一発見者。妻ギュルチンオクタイというパソコンに詳しい息子がいる

エネス:メリケの階下の住人で知人。骨董品店主

ベーチェット・デミラル:メリケに抗うつ剤を処方していた医師

シムゲ・アイデミル:陶芸インフルエンサーで、メリケをライバル視

エズキ・タンドアン:栄養ブランド “リヴィ・フロー” のCEO

ジェム・アッカヤ:シムゲの恋人。俳優

イブラヒム:オネム警部へのメッセージを届けるよう依頼された人物

バルシュ:マスク等を作る青年

エピソード3・4:「憎悪の辞典」「1番」

導入部あらすじ

オネム警部へのメッセージにあった “メリス” は特定の誰かの名前ではなく、“自分に自信があり社交的で男性に隙を見せない女性” に対する蔑称であることがわかります。それは若い男性や子どもから発せられることも多く、自称 “インセル(非自発的な独身者)” が多く含まれているとのこと。彼らは自分自身の孤独を女性や社会システムのせいにするミソジニーです。

オネム警部の携帯電話に、アルズという知人女性から着信します。彼女は「人を殺した」と言っています。警部がかけつけたところ、絶命したアルズが倒れていました。ほかの人の気配を感じたものの、姿を確認することはできませんでした。

アルズは医師で、クリニックからはパソコンやカルテが持ち出されていました。オネムがアルズの携帯電話に発信すると、室内のキャビネットから着信音が聞こえてきました。扉を開けると、携帯電話を握りしめた秘書エリフの遺体がありました。

セルダルとハサンは話を聞くためにエリフの婚約者アルパイに会いにいきましたが、彼はその場から走り去り、別の男イスマイルをふたりの刑事の頭上へと投げ落とします。イスマイルはアルズ医師の患者で、彼の迷惑行為を婚約者から聞いていたアルパイは「エリフ殺しの犯人に違いない」と思い込んだのです。

ベルクは殺害現場にあった品々を調べ、胸像に残された直近の指紋が1年前に交通事故で死亡した女性トゥリン・ウナルのものであることを見出します。彼女はアルズ医師の元患者で、付きまといに悩み「警察に相談したものの役に立たなかった」と訴えていました。

また、謎の小包を受け取った女性は16都市37名にまで拡大していきます。

登場人物

[登場人物]

デニズ:記者

アルズ・ヤマン:心理を専門とする医学博士。オネム警部の知人。ガムゼという娘がいる。夫とは死別

エリフ:アルズの秘書

アルパイ:自動車修理工場の経営者。エリフの婚約者

イスマイル:アルパイが投げ落とした男。アルズ医師の患者だった

トゥリン・ウナル:1年前に交通事故死した女性。アメリカに住む姉ジャナンがいる

ムラト・カラエル:トゥリン・ウナルの元夫で実業家。彼の弁護士がジェンギズ・ギュレリ

ヌラン:ガラタでレコード店を経営

メフメト・バトゥケント:美容外科医

フィリズ・アクトゥルク:トゥリンの交通事故の相手。母はケヴセル

ニハル・タシュチ:看護師

ケナン:午後4時の予約患者

エシン・アクギュンドゥズ:キプロス出身。アダナで謎の小包を受け取り、その後イスタンブールへ逃げてきた

イペック・テキン:記者の情報源

エピソード5・6:「アルテミスの使者たち」「黒いリボン」

導入部あらすじ

工場で異常が検知されます。混乱のなか、エンジニアのジェイダが命を落とします。事故のようにも見えましたが、何者かに襲われたのです。

彼女の友人の弁護士エブルがオネム警部のもとを訪れます。「何かあったときは警察に届けるように」とジェイダに言われていたとのことで、それは鍵でした。

ジェイダが保管していた物品、事故現場の検証、遺体の検視等から、欺瞞に満ちた彼女の家族関係が浮かび上がってきます。ジェイダは夫ビュレントの浮気を疑っており、実際のところ、彼はジェイダの兄嫁レイラと関係がありました。いっぽうでジェイダには何者かの依頼による尾行者が付いており、その人物は前科者で裏社会とのつながりがありました。

特捜班が捜査を進めるにつれ、トルコでは違法とされている代理出産、そして人身売買ビジネスを仕切っているキプロスの組織の影が、この一族の動きの周辺に見え隠れするようになっていきます。

いっぽう謎の小包(ドラマでは “箱” と言っている)を受け取った女性セラが姿を消したという通報が入ります。捜査担当者たちに緊張が走ります。

登場人物

[登場人物]

ジェイダ:兄フラトが父ジェマルから継いだ工場のエンジニア。夫ビュレントは大学の同級生で、彼との間に子どもがふたりいる(娘はニサ

アリ:工場エンジニア。ジェイダのアシスタント

エブル・トゥイグン:ジェイダの友人で弁護士

エレナ・サラヴナヤ:ウクライナ人。ジェイダの子どもたちの乳母

ダリヤ・クラヴィリ:ウクライナ人。乳母の仕事であると勧誘され、イスタンブールで売春をさせられていた女性。姉ポリーナはキプロスで代理母を請け負っている

レイラ:フラトの妻でビュレントの愛人

セラ:謎の小包を受け取った女性。その後、行方不明となる

ヤクプ:執事。妻はギュルバハル。息子は口をきけず、いつも黄色い合羽を着ている

タメル:キプロス警察の警部

エンデル・サリタシュ:キプロスの病院経営者で医師。トルコ・キプロスに勢力をもつ巨大な犯罪組織に加わっている

ハリット・アビ:キプロスの犯罪組織の幹部。孤児出身

ムフタル:ハリットの右腕。孤児出身

エピソード7・8:「セラはどこに?」「ケルススの正義の天秤」

導入部あらすじ

オネム警部たちは、アルフィオス・ホテルのマーケティング部長メルテム・カヤラル殺害事件の捜査のためにイズミールへと向かいます。現場の遺跡(議場跡)で、謎の箱が発見されます。

エフェソス日報の記者を名乗る男が、流していないはずの情報(メルテムにメッセージが送られていたこと)について捜査班に質問を投げかけます。オネム警部は不審に思いましたが、その男は速やかに姿を消し、正体を掴むことができませんでした。

殺される前、メルテムは勤務先近くのタクシー会社のクルマに乗り、“友だちが迎えに来る” という場所で降車。そこは人の気配のない林道でした。ギョクチェが調べると、隣接していたのはジハン・カフラマンの所有する土地。メルテムは、勤務先ホテルで行ったカフラマン一族の末の息子セルカンの結婚式について苦情を申し立てられていました。

いっぽう謎の小包事件については、先のエピソードで拠点らしきところが特定されており、箱を贈られた女性のなかでも命を落とす予定の者には “黒いリボン” のマークが付けられていることが判明しています。メルテムも “黒いリボン” を付けられた標的でした。

セルダル警部補は、関与の疑われる男たちを拘束して尋問。メンバーが秘密のアプリを通じて恨みをもつ女性たちを登録すると、“キング” がその中から標的を選定し、64人に及んでいたことが判明します。“キング” には “シャドウ” という伝令係の右腕がいることもわかりました。

一連の事件が、思いのほか昔の出来事に端を発していることを捜査班は突き止めていきます。

登場人物

[登場人物]

メルテム・カヤラル:アルフィオス・ホテルのマーケティング部長。数年前にイズミールへやってきた

アルタン・ユルマズ:アルフィオス・ホテルの経営者

セルカン・カフラマン:アルフィオス・ホテルで大きな結婚式を挙げた

ジハン・カフラマン:家業を継承している実業家。父はサイト

ケレム・カフラマン:ジハンの弟。メルテム・カヤラルの交際相手で下半身不随

ハリル:自動車整備工

サメット:自動車整備工場の見習い

ゼイネプ・キョプリュリュ:謎の小包事件に関与していると目されたが、10年前に交通事故により死亡

シュレ・ゲンジョウラル:ゼイネプの友人。夫はボラ、娘はアダ

感想:私もミソジニーやモラハラ男は嫌いなのだが…

このシーズンも楽しめました。“謎の小包事件” という流れがエピソード1~8にあり、2エピソードごとに、ほかの殺人事件とリンクする構成は関心を持続しやすかったです。

私もミソジニー、モラハラ男に分類される男性は嫌いなのですが、警察や司法が裁いたところで数が減るとは思えず(マシにはなるかもしれない)、そこが悩ましいところです。

啓蒙活動によって人権や女性の権利に対する意識を高める、まずは女性の側が自律・自立・尊厳を前提にした生き方を選択する、といったあり方は考えられるものの、社会関係から生まれた劣等感、人間関係によってもたらされた心理的外傷(トラウマ)が既に深く刻まれている男性たちに変化をもたらすのは難しいと私は思っています。

生まれたときの “まん丸” が “まん丸” のまま、人の世の穢れを知らない段階から、男性と女性は平等であり、女性が男性より劣っているわけではない、したがって男性から蔑まれて虐待されるような存在ではないことを、肌感覚を伴って骨身に浸透させる、日常的に涵養していく必要があるでしょう。

いっぽうで、ミソジニーに嫌悪感をもっている女性は男性に期待しない傾向にあると感じていて、重い物をもつ/高い所の物を取る等の場合を除き、男性のサポートを必要としなくなっていくように思います。個人的な感覚では、大半の男性はミソジニーの要素をもっています(そうでないように見えても、ある条件が揃うと発現する)。婚姻率や出生率が減少の一途を辿るのは必然です。

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