原題は “Ride or Die”。制作はアメリカで、物語の主たる舞台はイギリス。
ロンドンで暮らす下院議員の妻デビーと法廷会計士のジュディスは20年来の親友。しかし、ジュディスの真の顔が殺し屋であることを、ある日デビーが知ったことで、ふたりの関係性に揺れと変化が生じます。ジュディスはこれまでと変わらず、デビーを心からの友人と思って接します。しかしデビーはときに不信感を募らせます。
「なんで?」と訊かれそうですが、「アンブレラ・アカデミー」に近いものを感じた作品(“局長” が “ハーグリーブス卿” みたいな立ち位置)。
「ライド・オア・ダイ~親友は暗殺者~」も、ぜひシーズン2以降を作ってほしいドラマです。
導入部あらすじ
オーストリアのスキー場。パーティーに興じている男性に銃の照準を当てる “ウィップテール”。遠隔の指示者から引き金を引くことを命じられますが従わず、テーブル上にあったナイフで男性を刺して立ち去ります。コードネーム “ウィップテール” は女性。名前は “ジュディス・バートン”。
殺しの仕事の後はパーティーで派手に騒ぎ、バーテンダーをハント。豪快にセックスを楽しみます。豪胆、豪傑、独断専行に見えますが “ウィップテール” には、別の顔がありました。
“ジュディス・バートン” としての生活拠点はロンドンで、そこには20年来の親友デビー・クレイボーンがいます。デビーはジュディスの本職が殺し屋であることを知らず、法廷会計士だと思っていました。
“ウィップテール” に指令を出している暗殺組織のサムは、彼女が以前のようにルールに従うことかなくなり、自分勝手なやり方で職務遂行するようになったことを問題視。引退を勧告しますが、彼女は拒否します。仕方ないので、サムは “ウィップテール” を指名しての依頼があったことを彼女に話し、任務を託します。
慈善団体 “救済の水” のチャリティパーティーの会場で「ビリー・ドノヴァンに毒を飲ませ、心臓発作に見せかけて殺害する」というのが、その内容。
デビーも下院議員である夫デヴィッドに伴って “救済の水” のチャリティパーティー会場であるホテル・モントクレアへ。その道中、夫から離婚を切り出されます。突然のことであり、公私ともに彼をサポートしてきたという自負をもつデビーは気が動転。パーティー会場では深酔いし、美しくない振る舞いを晒します。
いっぽう標的のビリー・ドノヴァンを殺害するため、ホテルの彼の部屋へと足を踏み入れたジュディス。血にまみれた複数の遺体(用心棒や側近など)に加え、倒れている下院議員デヴィッド(デビーの夫)を発見します。うちひとりの手にあったポストカードには “ミルゲート共同墓地” の絵、そして “私が恋しい?D.C.XX” とのメッセージがありました。
雰囲気から察するに、よからぬ連中と取引していたデヴィッド。ビリーの側近らがホテルの部屋で殺されたことを隠匿したい暗殺組織( “ウィップテール” への直接的な指令者)は殺人事件があった事実を消し去ります。
また、デヴィッドの裏の顔を知っているに違いないと反社会的組織(アルバニア系ギャング)は考え、妻のデビーを拘束しようとします。しかしジュディスによって彼女は救出され、ふたりはホテルから逃走します。
絵はがきにあった “ミルゲート共同墓地” の620番の墓には “ジュディス・バートン” の名が刻まれており、棺の中には黒丸の付いた “ジュディス(ユデイト)の書” がありました。“ジュディス(ユデイト)の書” は聖書の外典であり、“ジュディス” は女性初の暗殺者。黒丸は海賊が使う “死の宣告” の印であるそうです。そんなジュディスと墓地管理人の会話を立ち聞きしたデビーは、長年の親友の正体を知ることに。
親友と思っていたジュディスに不信感を抱き、距離を取ろうとするデビー。いっぽうで怖れ知らずの彼女は手がかりを得てギャングたちの懐に飛び込み、夫デヴィッドとの関係を探ろうとします。
暗殺指令遂行のため、ビリー・ドノヴァンを追い続けるジュディス。そんななか、ビリーの周辺を親友デビーがうろついていることを知って彼女を守ろうとします。
そしてビリーを追うジュディスに対し、命を狙っているかのようなメッセージを送り続ける正体不明の人物。
デビーとジュディスは揉めつつも、それぞれ
- デビー ⇒ 夫デヴィッドが大金をギャングから奪った理由、姿を消した夫の現在地点を突き止めたい(死体になっていたとしても)
- ジュディス ⇒ 工作員としての進退がかかっているので任務を完了させたい、自分の命を狙っているかのような仕掛けをしている人物を特定したい
というニーズをもっていたことから、ともにビリー・ドノヴァンを追うこととなり、女ふたりの先の見えないロードトリップが始まります。
登場人物
ふたりの主人公
- ジュディス・バートン:表向きは法廷会計士、本職は殺し屋(工作員)の “ウィップテール”。聖メアリー修道院の養護施設出身
- デビー・クレイボーン:ジュティスの友人。下院議員デヴィッド・クレイボーンの妻で、スピーチライターや折衝などもこなす。イエール大学法学部出身のアメリカ人。息子と娘ジェマがいる
イギリス暗殺組織の関係者
※ 元はイギリス政府が立ち上げた秘密工作プログラム。政府が手を引いた後、独立した組織となった
- サム:局員。“ウィップテール” の管理担当官
- クイニー(ヴィクトリア)・ウィリアムズ:“ウィリアムズ&ドーター(靴の修理店)” の跡取り。ミセス・ウィリアムズ(ダイアン)の娘。靴の修理のほかパスポート偽造、武器やIDバッジなどの手配も行う。サムや “ウィップテール” の協力者
- ジャック:局長。最後のほうで彼の名が “ジャック” であることが判明する
- アマンダ:局員。サムよりも上位者
- マーティン・ショウ:“ミルゲート共同墓地” の管理人
- ブレット:工作員。寝台車でジュディスたちにお酒をふるまう
- アナ:“ウィップテール” と組んでいた工作員。コードネーム “レッドバック”
- ニルス:サムから仕事を依頼され、ピンポイントで現れるロン毛の工作員
- ロリー:局員
慈善団体 “救済の水” パーティ出席者
- ビリー・ドノヴァン:“ウィップテール” の標的。マネーロンダリングに関与
- デヴィッド・クレイボーン:下院議員でデビーの夫。ギャングとの取引で2400万ポンドを持ち逃げする
- イアン:デヴィッドが率いる党の重鎮
ギャングたち
- エルゴン・クレシュニク:アルバニア系ギャングのボス。2400万ポンドの件でデヴィッド・クレイボーンと妻デビーを追っている
- スピロ・クレシュニク:エルゴンの息子
- ベスニク:エルゴンの手下
- ヴォルタン:エルゴンの手下
- ジェンド:エルゴンの手下
インターポールの関係者
- ジャック・ブーシェ:刑事。寝台列車から消えた重要参考人のヴェロニカとスーザンを追っている
- コレット:警部補。ブーシェの元妻
その他
スペイン
- ボディ:スペインのホステルでデビーを誘惑するロン毛のオーストラリア人
- ペドロ:スピロ・クレシュニクらと取引する警官
モナコ
- イライジャ:モナコを拠点に口座を操作/管理している男
- ブライアン:イライジャの用心棒。ジュディスの友人
- アルナンド・ヴィセンテ:ジュディス(クララ)に声をかける男。武器商人
感想&メモ:後味のよい犯罪者たちの物語
ビリー・ドノヴィンはいいヤツなのか、悪党なのか
結局、①“救済の水” とはいかなる慈善活動を行う団体だったのか、②そこでビリー・ドノヴィンはどんな活動をしていたのか(マネーロンダリング以外について)、③ビリー・ドノヴィンの暗殺を依頼したのは誰だったのか、といったことはわかりませんでした。
それでも最後には、本来は悪党であっておかしくない “ビリー・ドノヴィン” が好感度の高い人物へと昇華されていったという不思議な物語。
デビーの夫デヴィッドのような “セコい悪党” じゃなかったことは大きなポイントだったかもしれません。
“暗殺者になった孤児”と“実は有能な妻”の覚醒
後のコードネーム “ウィップテール”(ジュディス)は局長によって孤児院から引き出され、特別な訓練を経て暗殺者となりました。愛してくれる家族のいない、特定の人物に愛情や愛着をもつことを禁じられてきた人生がデビーとの出会いによって変わり、ふたりはかけがえのない生涯の親友となります。
ジュディスにとってデビーは唯一心を許して自分をさらけ出せる人でしたが、組織に対しては「暗殺者としての活動に利用するため親友を装って付き合っている」という体裁をとるほかありませんでした。
ジュディスが暗殺者であることを知ったデビーは、これまで親友と信じてきたジュディスの何が本当なのかがわからなくなり、ときに不信に陥りつつ、最終的に自分に見せていた姿は本当のジュディスであったことを確信します。
元は弁護士で有能だったデビーは、デヴィッドの妻となることでアメリカからイギリスへと渡り、自分自身のキャリア探求を休止し、夫が政界で地歩を固めていくことのサポートに徹してきました。そんな夫が意外に愚かな男であることがわかり、彼と別れて再び自らのキャリアを築き上げようという流れになります。
ビリー・ドノヴァンにまつわる出来事を通じて大きな嵐が吹き荒れ、予測不可能な日々のなか続いていくジュディスとデビーのロードトリップ。
そのプロセスを経てふたりの絆の強さはさらに増し、それぞれが人生に向き合い、自分を大切にして生きるフェーズへと向かいます。人生の後ろ暗いところから陽が昇るかのようなドラマで、すっきりとした後味で終わります。
シーズン2に向けての伏線
新たな人生のスタートを切ったふたりですが、そんな彼女たちを複数の工作員たちが列車内で見張っているところでドラマは終わります。
「誰の監視下にあってもジュディスとデビーは幸せな人生に向かっていくんだろうな」と私は解釈しましたが、シーズン2への伏線とも考えられます。
すごく面白いドラマだったので続編があると嬉しいです。“ジュディス” や工作員を卒業し、本名で生きる人生にシフトした “旧・ジュディス”。別の工作員たちに狙われ続けることに対して「デビーと共にどんなふうに対処していくのだろう?」と思います。
インターポールの職務範囲と権限が謎
このドラマを観ると “インターポール” が捜査や逮捕を担っているように見えませんか?
でも “インターポール” の役割は以下の通りです。
各国警察の情報共有と捜査協力を調整する機関で、自ら逮捕や強制捜査を行う権限はなく、加盟国の国内法に基づく警察活動を支援する権限のみを保有する
ジャック・ブーシェ刑事とコレット警部補は “インターポール” を名乗って捜査の主導権を握り(ブーシェ刑事は発砲すら行い)、デビーは胸に “インターポール” と書かれたトレーナーを着せられて拘置所みたいな所に入れられていました。
本来の “インターポール” の職務範囲や権限とは異なっていたんじゃないかと思います。
