ウェブトゥーンシリーズ「マネージャー・キム」を原作としています。
普段アクションものは観ないし、韓国ドラマファンというわけでもないのですが、諜報/スパイものということで視聴。
全体にコミック的といいますか、お約束のパターンも含めて楽しめました。“アクションシーン” がすごいのか、すごくないのかについてはまったくわかりませんでした(場面のテンポ&リズム作りに有効とは思いますが、もともと関心が希薄が領域)。
思春期の娘との距離感に悩んでいる銀行勤めのシングルファーザーが、娘がイジメを受けた挙句に失踪したことをきっかけに「リアクティベート」される物語。
かつては北朝鮮の秘密工作員、その後は韓国(南朝鮮)の秘密工作員でしたが、妻を失い、娘を男手ひとつで育てることになったのを契機に一般市民としての父を生きることを選択。
しかし高校生になった娘が危機的状況に陥ったことで、かつての最強工作員としての鋭さ&強靭さが最大限に活かされます。彼の「再活性化」によって社会の裏側を担う人々、国家(南北朝鮮)間の駆け引きにまで影響が波及していきます。
導入部あらすじ
迷惑駐車の車内から突き出された入れ墨入りの左腕。火の着いたタバコをスーツの背にぶつけられたキム部長。挑発に乗らずにやり過ごしたところ、次は走り出した車が接触して身体ごと跳ね飛ばされることに。
「お前は当たり屋か」と因縁をつけられますが、ぶつけてきたのはチンピラたちの車のほう。キム部長は「私は大丈夫ですから」とその場を後にしようとします。しかし相手のほうが離してくれません。抵抗せずに謝るキム部長。きっと腰の低い人なのでしょう。
シングルファーザーのキム部長は可愛いエプロンをして家事をこなし、父として娘に献身していました。そんな彼は悩んでいました。高校生の娘ミンジは父とのコミュニケーションを避けており、顔を合わせたところで彼の言いつけを守らず、彼女の個人的生活についての情報を与えてくれないからです。「この距離感をどうにかしたい」と思っているキム部長。勤務先のサンアのアドバイスで娘のミンジに高価な誕生日プレゼントを用意します。
いっぽうのミンジは学校で、チュハク建設の会長の娘ヘリらに「ひとり親」「臭い」等の言いがかりをつけられ、苛められていました。娘は娘で、ひとり悩んでいたのです。
ヘリのボーイフレンドであるナムフンが体操服を貸したことで、ミンジはさらに反感を買い、呼び出されて暴力を振るわれます。ひとり親であることを嘲笑されたことでミンジも応戦。しかし学校側は有力者の娘ヘリの言い分を鵜呑みにしてミンジが一方的に暴力を振るったとみなします。
「苛められていたのは自分のほう」とミンジは主張。しかし父であるキム部長は土下座をして詫びます。娘を信じることよりも加害者への謝罪を選んだ父にミンジは落胆。
ヘリのボーイフレンドのナムフンからSNSのDMで呼び出されたミンジ。その日、誕生日を迎えた彼女は父であるキム部長の元に戻ってきませんでした。娘の味方をせず、学校やヘリとその家族の感情への配慮を優先したことを後悔するキム部長。
娘が呼び出された場所にはコンクリートブロックと血糊、ヘリが髪を結わえていた飾りの付いたゴムが残っていました。状況を理解した元凄腕エージェントのキム部長。長らく切断してきたスイッチがリアクティベートされるときがやってきました。
登場人物
キム部長とその家族
- キム・ドヒョン(キム部長):ドラマでは一貫してキム部長に名はないが、原作では “ドヒョン” という名であるらしい。サンセン貯蓄銀行に勤務するサラリーマン。シングルファーザー。韓国チョンサン部隊で秘密工作員だった北朝鮮の元・人民軍兵という過去をもつ。北朝鮮からすると “1級手配犯(特級工作員時代のコードネーム:73番)”。韓国からすると “監視対象1号(コードネーム:66番)”
- キム・ミンジ:キム部長の娘。ソンイン高校2年生
- イム・ユジン:キム部長の妻。ミンジを産んで死去。「ミンジの父として過去を忘れて生きてほしい」と言い残す
ソンイン高校の生徒たち
- カン・ヘリョン:ミンジに頼み事ばかりする、だらしない女子生徒
- キム・ナムフン:女子生徒の憧れの的の男子生徒
- チュ・ヘリ:チュハク建設の会長の娘。取り巻きのヤンキーたちとミンジを苛める。見栄っ張りで嘘つき
キム父娘の生活圏内にいる人たち
- イム・ホウォン:キム父娘の住む部屋の1Fにある “トウォンクリーニング店” の店主。実は特命局工作員
- カン・ハクス:サンセン貯蓄銀行の副支店長。自分に甘く、部下の手本にならないオジサン
- チョン・サンア:サンセン貯蓄銀行におけるキム部長の同僚。実は特命局工作員
キム部長の仲間たち(元・対北工作隊員)
※ 2006年頃、3人はチョンサン部隊に属していた
- パク・ジンチョル:元軍人。独自の美学に基づいて生きる、叫ぶように話す男。海兵戦友連合会の事務所によく出入りしている。ロック愛好家の一面をもつが、たいていは軍服姿。娘はダビン。恐妻家で妻はカン・ジヨン(第17上陸機動旅団 警備団長/チョクリン部隊 特殊警備団)
- ソン・ハンス:オリンピック元韓国代表で金メダリスト。現在はハヤンテコンドー道場の館長で指導者。いつも道着姿。息子はテフン
チュハク建設の関係者
- チュ・ガンチャン:チュハク建設の会長。用心棒上がり。ヘリの父で娘を溺愛
- ナム:秘書室長
- ヤン:下請け会社の社長
- シム:カンチャンから賄賂を受け取り、再開発プロジェクトを推進する現国会議員
- チョン:会長の運転手を務めることが多い。肩書は「代理」らしいので、正式には秘書室長代理?
- チョ:課長
- イ・シヨン:キュダム法律事務所の弁護士
反社グループ
- ジュンデ:金歯のチンピラ。チュハク建設の下請けだったヤンの会社を引き継ぐ
- オ・ミンチョル:南部地区集金係で金歯派。倒れているミンジの処理を依頼される
- ソン・ミンホ:ヘリの依頼でミンジをおびき出したチンピラ。オ・ミンチョルの弟分
- ホンシク:オ・ミンチョルの弟分
- キム・サンマン:ジュンデの手下。相撲取りみたいな男
- パク・ガンミン:ジュンデの手下。サンマンとセットで動く
- ソクジュン:ジュンデの手下
- シン・ソンホ:ミンジの携帯を胸のポケットに入れた男
【韓国】特殊任務局(SMD)の関係者
- カン・グクチョル:コードネーム “オケラ”。国家特殊任務局局長。麻生太郎似
- チャン:キム部長の除隊を認めた韓国特殊部隊の将軍(隊長)
- イム・ドヒョン:国家安全保障次官。チュハク建設の会長チュ・ガンチャンと懇意
【北朝鮮】朝鮮人民軍 対南諜報総局の関係者
- ロ・テシク:対南諜報総局の元総局長
- キム・ジョンソン:対南諜報総局の副局長。北朝鮮の人民軍将校(キム部長)によって殺害される
- リ・ウンリョン:対南諜報総局の現総局長。顔に十字の傷跡。キム部長らを特級工作員に育てた
- パク・ヨングァン:部隊最強の特級工作員で伝説の “66番” と呼ばれていた。北朝鮮の育児院でキム部長とともに育った
- パク・ガンソン:ヨングァンの弟。黒いキャップの男
- チャン・テサン:オリンピック柔道の元代表選手
その他
- チョ・ピョンギン:キム部長の古い知り合い
- イ・ドキュ:キム部長が面接を受ける事務所の所長
感想&メモ:サービス精神たっぷり。楽しみどころが多い
詳しくないけれど、韓国作品っぽさがあったように思う
ツッコミどころは多々あれど、全体に韓国ドラマらしいサービス精神に溢れた作品(韓国ドラマをあまり観ない私としての感想)。コメディとしての要素、親たちを巻き込んでいく子ども同士の諍い、元工作員(パク・ジンチョル)の焼き肉屋での振る舞いをきっかけに北朝鮮の監視の網にかかってしまった1級手配犯のキム部長、個性豊かな工作員同士の因縁や関係性…。
小さな伏線、ちょっとした笑いが効果的に配置され、南北朝鮮の諜報の世界でのせめぎ合い、反社会的世界とのリンクなど、より大きな構図へとつながっていくところが面白いドラマでした。
やはりコミックっぽいというか、主人公たちが不死身過ぎ
伝説的工作員が最低でも5名(キム部長、パク・ジンチョル、ソン・ハンス、パク・ヨングァン、パク・ガンソン)は出てきますが、身体的能力が常人離れしていて、怪我をものともしなさ過ぎ。
キム部長なんて大きな怪我を何度も負っているはず。それでもヒーヒー言わずに何事もなかったかのように活動し続けます。細い身体の娘ミンジも強靭で、べっとりと血糊を残して行方知れずになったはずなのに、その後を見ると大した切傷もなさそうで、コンクリートブロックで殴られた際に一時的に気を失ったということのようでした。「あの血は誰のものだったの?」って思いました。
本作は、生成AIを活用したことでも話題になりました。最初の2エピソードでは、実写ではなくAI技術によって約3分のアクションシーン(建物の爆発、雪道やトンネル内でのカーチェイス、車両が横転して川に突っ込む場面、銃撃戦、武道での戦い)が製作されました。
撮影のために物理的なモノを作ったり壊したりする必要がなく、俳優たちのトレーニングに費やす時間や怪我を減らすこともでき、生成AIはいろんな課題を解決し、可能性を広げてくれそうです。俳優が肉体を使ってリアルに演じる部分が減っていくと、それはそれで面白味を欠くことにはなりそうですが。
“母親がいない” ことがイジメの理由になるなんて…
韓国ってそんな国なんでしょうか?
いじめっ子にしてみれば、苛める理由なんて何でもよくて「ひとり親」を言いがかりにしているだけかもしれません。にしても、母親が早くに死んだことをイジメのネタにするなんて時代遅れか田舎者の世界。観ていて不思議な感覚に包まれました。
「メガネをかけた、ただのおじさん」は世を忍ぶ仮の姿
本作の最後に元・対北工作隊員のおじさんたち(キム部長、パク・ジンチョル、ソン・ハンス)が店で新しいメガネをかけるシーンがあります。そう言えば3人ともメガネをかけていましたね。
メガネをかけた、普通に働き、普通に子どもに手を焼く、“ただのおじさん” たちには人の知らない過去(経歴/能力/生きざま)があって「驚くような爪を隠した鷹かもしれませんよ」というのがメッセージのひとつだったように思います。
キム部長のざっくりとしたヒストリー
ドラマ視聴でわかったことをざっくりまとめると、以下の通り。キム部長が今なぜ、あのような状況なのか、わかるようでわかりづらくなかったですか?原作のWEB漫画は読んでいないし。
- キム部長は北朝鮮生まれで孤児だった。自分の名前もよく知らずに育児院で育つ
- 1997年、少年だったキム部長が暮らしていたクムガン育児院にリ・ウンリョン少佐(後の対南諜報総局長)がやってきて、見込みのありそうな少年たちを特殊工作隊員候補として連れていった。キム部長もそのひとりだった
- 過酷な訓練の日々。後にミンジの父として生きるようになってからと比べると精神的にも荒んでいそう
- キム部長と優秀な工作員パク・ヨングァンを含む特殊工作隊が韓国の江原道の建物内に侵入し、要人の暗殺に向かう。リ・ウンリョンの謀略で工作員らは見捨てられ、パク・ヨングァンは命を落とす。キム部長は生き残った(このとき韓国によって捕らえられ、チョンサン部隊への工作員としての参加を促された、という流れだったのでは)
- 2006年、チョンサン部隊にキム部長が加わる。パク・ジンチョル、ソン・ハンスと出会う。彼らはそれぞれが伝説的な工作員だった
- 2008年、韓国の指令で北朝鮮の対南諜報総局のキム・ジョンソン副局長を暗殺した後に、チョンサン部隊の除隊許可を強硬に要求。妻イム・ユジンが娘ミンジを出産したことが関係していたと思われる
- 2014年、キム部長らが引っ越し作業をしている最中にミンジが行方不明になる。そのときの子役はとても可愛いのだが、幼くて6歳には見えないのである
