「お前はみんなの新たな地平を開いた」-「ザ・コミットメンツ」を見て

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アラン・パーカー監督の「ザ・コミットメンツ」を観ました。

ONCE ダブリンの街角で」でグレン・ハンサードが主演する15年前(21歳当時)、まだ音楽で食べていけていない無名の人だったらしいのですが、その頃ギタリストの役で出演した映画が「ザ・コミットメンツ」ということで、観ることにしました。ほかの出演者も、みな無名のミュージシャンです。

注意! この投稿は映画を通して考察する内容なので、ネタバレがあります。

私は、グレン・ハンサードの顔(目がキョロキョロ、おちょぼ口)が好きではありません。なお「はじまりのうた」のアダム・レヴィーンの顔も好きではないです。

「ザ・コミットメンツ」 はアイルランドの首都ダブリンを舞台に、労働者階級の若者たちが結成するソウルバンドの話。当時のアイルランド人が社会的な意味で「欧州の黒人」であったことから、映画の主人公たちが行き着いたのがソウルバンド。

私自身、若かった頃にバンド活動をしていました。

なので、この映画に描かれている若者のエゴとエゴのぶつかり合い、メンバー同士のいがみ合いの世界がよく分かります。(みんな自己中。上手い人は何であれリスペクトされるし、下手だと、他がどれだけ優れていようと疎んじられる。それぞれが、自分の方向性や感性が正しいと信じている、それが当たり前の世界)

バンドって “究極のエゴ“ が入口になっていて、あるポイントを経過することで “エゴを離れたゾーン“ に入るもののように感じています。バンドだけではないでしょうけど。

スタート地点は、ただのゴロつきとエゴイストと社会不適応人の集合体。がむしゃらに続ける時期を経て、回り回って内側で何かが成就されていくにしたがい、チャリティや社会的活動に積極的なオピニオンリーダーになっていくという流れは、洋の東西を問わず、よく見かけるパターン。マズローの欲求5段階説でいうと、「承認欲求」が満たされて「自己実現の欲求」の段階に至る、と表現できます。

映画「ザ・コミットメンツ」では、バンドが徐々に評価されてきたにも関わらず、バックステージでは喧嘩ばかり。挙句の果てにバンドは崩壊。

この12人中11人までが若者からなるバンドには、唯一のおっさん、ソウルミュージックの大物と共演歴のあるトランぺッターがいました。

メンバー同士の大ゲンカに終わったライブからの帰り道、おっさんトランぺッターと失意のマネージャーの会話が素晴らしい。おっさんトランぺッターを褒め称えるのは、実は自画自賛であり、先のふたつの投稿を通して、私が書いたつもりの内容に近いことを、おっさんトランぺッターが言っていた、という驚き。

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失意のマネ
失意のマネ

俺に嘘を付いたな!お前が言う通りに、すべてやってきたのに上手くいかなかった。

おっさんT
おっさんT

お前は何かを成し遂げたはずだぞ。

失意のマネ
失意のマネ

何も成し遂げていない。

おっさんT
おっさんT

分からないか。バンドの成功など何だ?お前はみんなの新たな地平を開いた。そりゃ、有名にもなれただろう。だが、くだらんよ。このほうが詩的だ。

失意のマネ
失意のマネ

そんなの価値がない。

おっさんトランぺッターは、コーラス隊の3人の女の子すべてに手をつけたスケベ親父。

そうは言ってもプロの世界でのキャリアも長く、年の功と言うんでしょうか、物事の表面(事実)だけを見ていたのでは見過ごしてしまう「メンバーそれぞれに、バンドを通じて開いた/開かれた扉があること(真実)」を示唆し、失意のマネージャーに「自分を責めるな」とアドバイスします。

失意のマネージャーは、目に見えて生み出される「価値」、しかも「その時点における価値(時価)」にしか目が行っていません。集客数、レーベルからの引き合い数、有名なメディアからの取材数、ギャラや売上の高さなど。そして、おっさんトランぺッターの言っていることの深さを知るには、まだまだ若いのです。

現実には労苦はなかなか報われないし、物事の表面的な部分が上手く行っていないとマネージャーとしての手腕や存在意義が問われるしで、彼にも失意するだけの理由があります。

そういう視点から見ると、おっさんトランぺッターの言葉は、不真面目で無責任な慰めにしか聞こえないのかもしれません。

ちなみにグレン・ハンサードですが、若かった頃はガリガリに痩せて華奢で女性的な風貌の人だった、ということが判明しました。若かりし頃のQUEENのロジャー・テイラーが劣化して、貧乏痩せした感じ。

15歳ほど年を取っておっさんになると見た目がごつくなって風格が出るのだなあ、と感心しました。(「ONCE ダブリンの街角で」のときは、女性的というよりは、むしろ男臭い)

現在は、アイルランドでU2の次くらいに人気のあるバンドを率いているとのことで、目に見えない部分での成就のみならず社会的にも成功されたのは佳きことです。

バックコーラスのひとりを演じているマリア・ドイル・ケネディは、シンガーとしても上手ですが、いろんな映画、ドラマで見かける、アイルランドの中心的女優に成長しています。

アラン・パーカー監督、私は「エンゼルハート」が大好きでした。「エンゼルハート」はホラー映画と思いますが、いろんなタイプの作品を手掛けているんですね。

長くなるので書きませんが、高校時代に1カ月イギリスで(アイルランドではない)ホームステイをしたときの思い出なども被り「ザ・コミットメンツ」、いろんな意味で心がほっこりするところの多い映画でした。

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