「ベター・コール・ソウル」のシーズン6は最終シーズンです。
エピソード1(青き春は過ぎ)
まずはオープニングが素敵です。ソウル(ジミー)の住まいの品々が業者の手によって片づけられていきます(看板が下ろされているのでオフィスもあったのかも)。芸能人のように派手で高級な大量のネクタイ・ワイシャツ・スーツ・靴、ゴージャスなベッドや調度品、ゴールドのトイレもあります。失踪間際まで女性が出入りしていた気配があります。今までのストーリーで出てきた小道具も部屋に残されており、懐かしい感じがします。ソウル・グッドマンの看板、高級車もしかるべきところへ移動するようです。ソウルの人型パネルはゴミ集積所に捨てられます。家具のひとつがトラックに運び込まれる際、ある扉から何かが転がり落ちます。キムがしばしば手に持っていた、パイナップルのヘタのようなボトルの栓でした。「つわものどもが夢の跡」。主が消えた住まいは郷愁を誘います。
このエピソードは私にとって「麻薬密売人ナチョの苦労を疑似体験する」回でした。ヘクター・サマランカの甥ラロの殺害を手引きした後、屋敷から逃亡するナチョ。ガスに弱みを掴まれ、内通者となって以降のナチョの苦労には並々ならぬものがあります。対するラロの抜け目なさ、用意周到さ、悪運の強さ、人心掌握術にも並外れたものがあり、ナチョは無事逃げおおせるのか、ラロはどのように収拾を付けるのかと胸が高鳴ります。
マイクがナチョの救出にあたりますが、彼のガスへの言葉はカッコイイです。ボス、リーダーたるもののあり方を諭します。
忠誠心は双方向だ。バルガ(=ナチョ)は要求に全部応えた。(ガス:やむを得ずだ)だとしても厳しい要求だった。そしてやり遂げた。つまり、あんたはあいつに敬意を払うべきだ
一方、キムは公選弁護人の仕事を積極的に行ないます。ジミー(ソウル)と一緒にいることで悪だくみや謀り事に関わる機会が増えていますが、彼女には彼女なりの「正義」の定義があるのでしょう。キムはHHM代表の弁護士ハワードを陥れる策略を練り、ジミーを引き入れます。ハワードのジミーに対する処遇は、ジミーの兄でありHHMの共同経営者であったチャックの意向が大きかったと思うのですが、どういうわけかキムとジミーはハワードを相応以上に恨んでいます。
依頼人のダークさはジミーが上を行きますが、シーズン6におけるハワード潰しの首謀者はキムという点がポイントかもしれません。後日譚にあたる「ブレイキング・バッド」にキムは登場しません。なぜ登場しないのでしょう。今のところ考えられるのは「別人になって身を隠した(掃除機屋ルート)」「高飛びした(国外脱出等)」「死んだ/殺された」の3つです。
決着がついたかのように見えた「サマランカ VS ガス」の対立は、エピソード1の最後で再び振り出しに戻ります。2段階目のフェーズに入るという表現のほうが適切かもしれません。ラロの存在感、得体の知れなさ感が素晴らしいですね(ラロ役のトニー・ダルトンは舞台出身の俳優であるようです)。またシーズン6のオープニングにあたるシーンは面白くて何度も観てしまいました。