将来ビジョンの有無で分類すると、フリーターは“積極的フリーター(将来に対するビジョンあり)”と、“消極的フリーター(将来に対するビジョンなし)”に大別されることは、前にも示した通りである。前者と後者は、まったく異なるグループではなく、ビジョンを獲得し、そこへの到達手段を定められるような適切な機会と動機付け、自律の精神があれば、後者から前者へのスイッチしていく。
実際には、正社員にも“将来に対するビジョンあり正社員”と“将来に対するビジョンなし正社員”の二層がある。アンケートによれば、正社員の3割弱に転職経験が、2割弱にフリーター経験がある。転職経験者の平均転職回数は1.6回、平均フリーター経験期間は20.4ヶ月となっている。一方フリーターの4割弱に正社員経験があり、平均正社員経験期間は45.7ヶ月である。
フリーターと正社員は、性別や年齢、学歴などの属性の傾向は異なっているが、さまざまな巡り合わせのなかで、「現時点でフリーターをしている」か「現時点では正社員として働いている」かの違いでしかない。そして恐らくは、学生にも“将来に対するビジョンあり学生”と“将来に対するビジョンなし学生”の二層がある。したがって、若年層の“自己納得型ライフスタイル”を考える場合、分かりやすい類型として、“積極的フリーター”と“消極的フリーター”の求める“自己納得”の質の違いを取り上げるのが妥当と考えられる。
“積極的フリーター”には、自由業に近い働き方をしていて、音楽、ダンス、デザイン等、専門性や技能によりフリーランサーを目指す人が目立つ。指向は比較的早期(多くは学生時代)から明確であり、程度にはばらつきがあるものの、実際に行動し、努力している。「したいことをやっているけれど、生活を成り立たせるほどの経済的、社会的評価を得るに至っていない」ことが不安材料であり、経済面や社会的評価との折り合いについて“自己納得”を求めている(→“積極的スタンス”)。
“消極的フリーター”には、自分の存在意義を確認しにくい状況への不安・フラストレーションがある。「景気が悪く、思うような企業に就職できなくて困っている」「やりたいことが分からない。でも、自分には何か目指すべき方向があるはずだと思う」といった、自分の存在意義にかかわる領域で“自己納得”を得ようとしている(→“消極的スタンス”)。
【“積極的スタンス” vs “消極的スタンス”】
積極的スタンス | 消極的スタンス | |
キーワード | 「私の価値って何?」 | 「私って、そもそも何?」 |
指向の特徴 | 指向は明確で、専門的技能を必要とする仕事の希望が目立つ | 漠然としていて定まらない |
行動の特徴 | コンペに挑戦したり、自分の指向に合った職場を探したりと、具体的な行動を伴っている | ボンヤリと考えているにとどまり、具体的行動に乏しい |
“自己納得”のポイント | 自分のスキル・職能に対する、納得できる評価と処遇の実現 | 存在意義とアイデンティティに対する、納得できる答えの発見 |
望んでいること | 生計を立てられるレベルの処遇と社会手評価を得ること | 自分のやりたいこと、自分にしかできないことを見つけること |
(【“消極的スタンス”と“積極的スタンス”のサポート要素】図表割愛)