[アウトプット紹介]繭(まゆ)のなかの“自己納得”世代―停滞社会を浮遊しつづける若者たち―(2002年)


【はじめに】

「フリーター」という言葉は、80年代後半、学卒後に進学も就職もせず、自分の夢を持ち続け、自由に主体的に生きる少数派の若者を応援するものとして誕生した。

近年、就職をせずパート・アルバイトなどで働く「フリーター」は急増しているが、「労働の質や生産性の低下」「社会保障の危機」などの観点から否定的にとらえられ、その矛先が「フリーター」個人に向けられることが多い。しかし、失業率の高まりや正社員雇用枠の減少など、社会環境の変化に伴って、必然的に「フリーター」が生み出されているという事実も見逃せない。サービス業など、フリーターがいないと成り立たない産業もある。

「フリーター」という生き方を、長い人生における「自分探し」に必要な時期と前向きにとらえる人もいるが、彼らに対する一般企業の評価は低く、フリーターが長期化するほど就職の道は険しくなっている。

この冊子は、「フリーター」層に焦点を当てながら、若年層の生活・就労面の意識や実態、指向性など、等身大の若者像を掴むことを念頭におきつつ、新たな生活価値の方向性を明らかにし、次世代型の雇用創出に向けた仕組み・支援策を検討・呈示した調査研究報告書のダイジェスト版である。

 

【CONTENTS】

Ⅰ. ライフスタイルもワークスタイルも大切なのは“自己納得”

Ⅱ. 「カタチを決めない」ことでストレス回避

Ⅲ. 次世代型ライフ&ワークスタイルと社会とのギャップ

Ⅳ. 次世代型の生活価値は“自己納得”軸で決まる

Ⅴ. “自己納得型ライフスタイル”に対し、求められる施策

[資料編]“フリーター”ってどんな人たち?

 

【調査研究の方法】

① 個人アンケート調査

全国18~29歳の男女3000人を対象に、生活意識・実態、仕事や働き方の実態・指向、就職活動の状況、将来設計などに関するアンケート調査を実施。回収サンプルの構成比は、国勢調査による同年代の男女比、年齢比に対応するように補正を行なった。

調査名:「ライフスタイル・ワークスタイルに関する調査」

抽出方法:住民基本台帳をベースにした名簿による無作為抽出

調査方法:郵送法

実施時期:平成14年2月~3月

有効回収数:回収838サンプル(回収率27.9%)

② グループインタビュー調査

以下の対象者(男女各5~6名)に対し、現在の仕事内容・経緯、就職活動状況や問題点、理想的な働き方・仕事、家族形成、社会人や正社員に抱くイメージについて、グループインタビュー調査を行なった。

フリーター後期:正社員経験のない27~29歳のパート・アルバイト

高卒フリーター:高卒・専門学校卒で、正社員経験のない25歳以下のパート・アルバイト

元フリーター正社員:3年以上フリーター経験をもつ29歳以下の正社員

③ 企業アンケート調査

全国の合計2000(製造業500、サービス業1500)事業所を対象に、若年層の形態別雇用状況、教育・研修内容、非正社員の活用と今後の意向、インターンシップ制度や副業の対応状況などについてアンケート調査を実施した。

調査名:「企業の若年層の雇用・活用に関する調査」

抽出方法:帝国データバンクの業種分類別データベースを利用し、業種を指定。無作為抽出

調査方法:郵送法

有効回収数:回収175サンプル(回収率8.8%)

 

【用語の説明】

「若年/若年層」 18~29歳までの若者および若者の層。

「フリーター」 パート・アルバイトで働く、30歳未満の若者。学生、主婦は除く。

「正社員/非正社員」 「正社員」は契約期間をもたず、フルタイムで働く職員・社員。「非正社員」は「正社員」以外の、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員などの多様な雇用形態を指す。

「その他社員」 ここでは「契約社員、出向社員、派遣社員」を指す。

「ライフスタイル/ワークスタイル」 ライフスタイル → 生活の基軸となる価値観・指向、ワークスタイル → 働き方の基軸となる価値観・指向と具体的な就労形態(パートタイム・フルタイム、常勤雇用・臨時雇用等)

「生活価値」 生活を構成する価値要素とその価値づけ(体系)の特徴