ひとつだけいいことをする愛を知らない女-ドラマ「ヴァニティ・フェア~燃ゆる欲望~」

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ウィリアム・メイクピース・サッカレーの「虚栄の市」が原作で、原題はそのまま “Vanity Fair”。冷静に考えると展開が強引でメロドラマみたいな内容なのですが、とても面白く「私ってこういうドラマも好きだったんだ」と目ウロコ。これまでに何度もドラマ化・映画化されてきたようです。

舞台が現代だったらさほど関心をもたず、恐らく19世紀初頭という時代背景に面白さを感じたのだと思います。私のなかではジェイン・オースティンの小説「高慢と偏見」に類似したポジションです。

貧しい天涯孤独のベッキーはうまく立ち回って周囲を利用することで資産と階級を手に入れようとし、裕福な家庭で育ったアミーリアは実家が破産しても頑なに愛に生きようとします。ベッキーはひとつだけいいことをします。

ドラマの冒頭、登場人物たちはメリーゴーランドに乗っていて、おとぎの国の軌道上で自分なりの人生を謳歌しようとしています。非常に象徴的な光景です。ウィリアム・メイクピース・サッカレー(役)はこう語ります。

みなさん ここは虚栄の市(ヴァニティー・フェア)。空虚で不道徳 そして滑稽な世界です。詐欺やウソや見かけ倒しに満ち 節操などありません。楽しくはないが やけに騒々しい。誰もが価値のないものを求め 躍起になっています。

いろいろ出てくるが主要メンバーはこの6人

家族、軍人、商人などいろんな人たちが登場しますが、柱になるのは次の6人です。

ベッキー・シャープ: 早くに両親を亡くして身寄りがない。お金と名誉が大好き。芝居を打つのが上手く、狡猾に世渡りする。必要に応じて男たちを誘惑する

アミーリア・セドリー: 株式仲買人の娘。裕福な家庭で育つが、父親の事業は破たんする。幼馴染のジョージ・オズボーンが許嫁だった。途中ぎくしゃくするが、タイプの異なるベッキーを友人として大切にする

ジョージ・オズボーン: アミーリアの許嫁で幼馴染。銀行家の息子。アミーリアの父親が経済的苦境に陥ったことにより自身の父親に破談を命じられるが、友人ウィリアム・ドビンの励ましにより意志を貫きアミーリアと結婚する。陸軍大尉

ウィリアム・ドビン: ジョージの親友。陸軍大尉(後に少佐)。ずっと以前からアミーリアに恋をしているが、彼女とジョージの結婚を応援するという泣ける男。誠実で思慮深く、この物語で唯一に近いマトモな男性

ロードン・クローリー: 準男爵家の息子で陸軍大尉(後に中佐)。ベッキーと秘密裏に結婚する。ギャンブル好きで抜け目なく、ずる賢いベッキーとある意味で釣り合っていた。ベッキーの浮気相手によって西アフリカのコヴェントリー島総督というポジションに飛ばされる(※調べてみたが、コートジボワールの近くに該当しそうな島はない)

ジョス・セドリー: アミーリアの兄。東インド会社で収税官をしている。ときどき箸休めのように出てくる人物。上品とはいえず、どこかしらズレた人

1815年より少し前から始まる

ベッキーとアミーリアがピンカートン女学校を卒業。ベッキーはクローリー家へ。アミーリアは父親の事業が傾き、ジョージとの婚約が破棄になりそうだった頃、ナポレオンがエルバ島を脱出します(1815年)。

軍人のジョージ、ウィリアム、ロードンはベルギーのブリュッセルに滞在。ジョージの新妻アミーリア、ロードンの新妻ベッキーも夫に帯同しています。ブリュッセルにはロンドン社交界のメンバーも集まっており、夫人を交えてのパーティも盛んでした。野心家のベッキーは人妻でありながらキーマンたちを籠絡しますが、不器用なアミーリアは社交の世界に馴染めず、少しでも上に上がろうと必死になっている夫ジョージとの間に隙間風が吹きます。ベッキーは友人の夫ジョージに秋波を送り、ジョージは人妻ベッキーに求愛の手紙を送ります。

その後のワーテルローの戦いでジョージは戦死。アミーリアは未亡人となり、息子ジョージーと暮らします。ベッキーとロードンにも息子ローディーが生まれます。

ウィリアム・ドビンはジョージの死後もアミーリアを助けます。しかし彼女の亡きジョージへの想いは強く、ウイリアムがいかに伴侶として優れているかに注意を払いません。失意のウイリアムはインドへ赴任します。一方、不遇な育ちのベッキーは愛を知らず母性に欠けています。立ち回りの上手い彼女が生き生きするのはお金を手に入れるとき、有力者の力添えを得て上流社会へ近づくときでした。

時代や戦争に翻弄されるベッキーとアミーリアを中心に物語が展開していきます。

ほとんどの登場人物が銭ゲバ体質

この物語の登場人物は、その多くが銭ゲバ体質です。ドラマ冒頭の言葉通り「誰も価値のないものを求め、躍起になっています」。永遠の価値などないものの獲得に血道をあげ、浮世を生きています。

  • ベッキー ⇒ 身寄りがなく貧しい出自。行動の基準はお金を得られるかどうか。ロードンと結婚したのも彼の伯母のマチルダからの遺産を見込んでのこと。戦いに赴く夫ロードンを見送ることもしない。思わせぶりな挙動で夫以外の軍人や侯爵からも金品を巧みに受け取る
  • ロードン ⇒ ギャンブル好きでお金がない。ベッキーと結婚したことがバレたため、ほとんどの遺産を相続できなくなる。計算高いベッキーに依存しているが上官との浮気は許さなかった
  • ジョージ ⇒ 父親が超銭ゲバ。反対を押し切ってアミーリアと結婚したため、親からの支援や遺産を得られなくなり、これまでの生活レベルを維持できなくなったとを嘆く。彼女との結婚を手助けしたウイリアムのせいにして文句を垂れる(男らしくない)。とはいえ、新婚早々に死んでしまったので遺産がどうであっても当人にはほぼ影響はなかった
  • その他の人々 ⇒ 何かというと金、階級、持参金等のことを言っている。それらを備えていない者は人にあらず、付き合うに値せずという価値観でさもしい。一方、ウイリアム・ドビン、アミーリアとジョスの兄妹(←お人好し)はお金を基準にしていない。しかしながらアミーリアは、死んだ夫(人として軽いジョージ)への執着が非常に強い。申し訳ない言い方にはなるが “価値のないもの” にこだわって今をないがしろにしている

この作品の面白さとは

以下の疑問、違和感が観る者の内側に穏やかでないものを生じさせるため、ベッキーとアミーリア、そしてウィリアムの行く末が気になります。

  • 夫ジョージが戦死した後もアミーリアは彼との思い出にこだわる。広い心と深い愛情でアミーリアの幸せを考えて行動する(しかも平均以上のルックスの)ウイリアム・ドビンに目を向けようとしない。エピソードが進むにつれ「アミーリアは優しく純粋な人なのに、なぜここまで意味不明な頑固さを貫くのか」という疑問がひたすらに湧いてくる。ウィリアムと結婚すれば間違いなく幸せになれるのに、アミーリアはその選択を拒み続ける。「アホなのか。鈍いのか」と目が離せない。計算高いベッキーと仲がよいところを見ても、多分、人を見る目がないのだろう
  • ベッキーとロードンは似ているところがあるが、それでも妻や息子に気持ちのあるロードンのほうがマトモ。愛を知らない計算高い女を妻に選んだのは自己責任であるが、ベッキーにどこかでツケが回らないとスッキリしない。彼女がお金と地位を得て幸せへと昇りつめていくのはイカンだろうという気持ちで視聴し続けてしまう
  • 同様に誠実で寛大、忍耐強くアミーリアを愛するウィリアム・ドビンは生きている間に報われなければならないと、彼を応援したい気持ちが募る
  • 原作ではウイリアム・ドビンも裕福な商人の子息。ベッキーがウイリアムを誘惑しなかったのは、彼がアミーリアを一途に思っていることを知っていたこと、彼がベッキーの本質を見抜いていたこと(籠絡できる可能性ゼロ)、精神レベル(生きている世界)が違い過ぎて交わる部分が皆無であったことが理由と思われる
  • ベッキーはひとつだけ、いいことをする。その行為に先立って、とある野心が誕生しており彼女の気持ちに余裕と活力、幸福感が生まれていた。そんなときだったからこそ、アミーリアに対して過去の贖罪をしようという気持ちが生じたようにも感じられる。100%の悪人はいないので、ベッキーだってよいこともするだろう

演じている人たち

登場人物同様、こちらも主要な人たちのみ。

  • オリビア・クック(ベッキー・シャープ役):「ベイツ・モーテル」でエマ役だった人。その当時から可憐で可愛い。このドラマでも忌々しい魅力を振りまいている
  • クラウディア・ジェシー(アミーリア・セドリー役):「ライン・オブ・デューティー」シーズン4でジョディ・テイラー巡査役だった人。こちらも可愛い人。鼻先のラインが好き。クラウディア自身の家は貧しく、シングルマザーによって育てられたとのこと。ビーガンで日々欠かさず瞑想するらしい。透き通るような美しさがある
  • ジョニー・フリン(ウイリアム・ドビン役):このドラマでは誠実で信頼できる男性を演じているが、まったく異なるタイプの人物を演じることもある。「ゲーム・オブ・スローンズ」のブロン役だったジェローム・フリンは彼の異母兄にあたる。ジェローム・フリンは歌手でもあるが、ジョニー・フリンも Johnny Flynn & The Sussex Wit というバンドで活動。バイオリン演奏も披露。音楽に秀でたDNAをもつ家系のようだ。南アフリカ生まれ
  • トム・ベイトマン(ロードン・クローリー役):「13人の命」で少年たちの救出にあたるダイバーのクリス・ジュエル役を演じている
  • チャーリー・ロウ(ジョージ・オズボーン役):よく知らない人。ファンタジー系が主戦場?
  • デビッド・フィン(ジョス・セドリー役):イギリス系アイルランド人。「ブラック・ミラー(シーズン1)」「ゲーム・オブ・スローンズ」などに出演している

[ロケ地]イギリス、ハンガリー(ブダペスト)

シェブニングハウス(ケント州) ⇒ クローリーの邸宅として

スカーリーズ コート(ウエスターハム) ⇒ ピンカートン女学校として

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